【徒然読書日記】 その47 ウエスト・ウイング

 

ウエスト・ウイング

ウエスト・ウイング

 

 

この本に言葉はなく、妖しい風景のみが

坦々と続いている。

 

大人向けのホラー絵本作家エドワード・ゴーリー

の作品の中でも個人的に特に好きな1作です。

子供の死を描くことが多いゴーリーですが、

この作品は唯一文章が一文字もなく

本当に絵だけの本です。

 

けれどその不気味さは随一だと思っています。

絵だけだからこそ、受け手の感じ方一つで無数の

ストーリーを紡ぐことができます。

「ウエスト・ウイング(西棟)」というタイトルからは

どこかの廃屋に迷い込んだ誰かの視点と思えます

が、ところどころ見える人物や影は一体なんなのか。

エストがあるなら東棟は?

主観者には一体何が起こっているのか。

 

個人的には表紙の無数の窓から覗いた先には、

まったく違う光景が広がっていた。というストーリー

などを考えていました。

 

私は読み手の中で完成する多様さというのが、本の

美しさの一つだと思っています。

自分のなかで広がり続ける物語というものを、

堪能させてくれるこの作品は私の心に強く

印象が残っています。

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