【徒然読書日記】 その21 夜長姫と耳男

 

夜長姫と耳男

夜長姫と耳男

 

 

「好きなものは呪うか殺すか争うかしなければならないのよ。」

 

私が最も好いている日本文学作家 坂口安吾の作品。

なぜ彼の作品はこれほどまでに幻想的なのだろうか。

主人公である職人弟子の耳男、絶世の美女たる夜長姫とその父である殿様、そして取り巻きの侍女や家来達。まるで童話のように紡がれるストーリーでありながらそこに描かれる人々は狂気じみていて生々しい。冒頭にて記載した言葉は夜長姫のものだが、この言葉が姫の狂気を表している。そして主人公たる耳男もまた狂気を抱えている。

けれど妄執だとしても、それもまた人間のもつ一側面なのだ。坂口安吾は善や悪という側面を超えて、一つの美の極致を描いているといっていい。

 

美しい作品としては「桜の森の満開の下」なども引けを取らない作品だが、私個人としては本作品を1番に挙げたい。

Amazon Kindleにて無料にて読むことができるので、ぜひ一度手にとってもらいたい。