【徒然読書日記】 その27 流

 

流 (講談社文庫)

流 (講談社文庫)

 

 

台湾を舞台としたピカレスク風青春小説。

主人公は喧嘩などはするが、闇社会の住民というわけではない。けれど20世紀後半の台湾において暴力は身近なものであった。抗日戦争を戦いぬき、主人公に大きな影響を与えた祖父とその殺人事件が本作の中心ストーリーとなっている。時代小説的要素とミステリー的側面を併せ持っている。人情社会、迷信が跋扈し、祖霊信仰を基に生きる。現代日本人と似通った点と異なった点が混在して、当時の台湾ならではの独特さを感じることができるでしょう。

本作の作者、東山 彰良は9歳の時来日するまでを台湾で過ごし、その後も世界中を旅したという経歴を持つ。その来歴から来る多様性に満ちた人々は魅力的で、読み進めるごとに引き込まれていく。

 

実は昨日投稿した豆花を食べるきっかけになった作品です。この作品を読むまで豆花というものを知らなかったんですが、作中に出てくる描写が美味しそうだったので調べて東京豆花工房まで行ってきました。詳しくは

【番外編】 豆腐系スイーツ:豆花 - Tatarianasterのブログ

をご参照ください。

また、作中の描写の一部を抜粋させて頂きます。

 

『わたしは豆花が大好きだった。とくに祖父が朝に買ってきてくれるあの誇らしい一杯が。ぷるっとした豆花にれんげを突き立て、甘く煮たピーナッツといっしょにかきこむとき、この世界で私を愛さぬ者などひとりもおらず、わたしはこの世界に君臨する小さな覇王なのだと思えた。』

 

 

 

最近文庫化されたので、お安く手に入れることができるようになりました。