【徒然読書日記】 その12 逆転世界

 

逆転世界 (創元SF文庫)

逆転世界 (創元SF文庫)

 

 

イギリスのSF作家 クリストファー・プリーストの作品。

最も好きなSF小説は?と聞かれたら文句なしでこれ!とお薦めできる作品です。

 

移動要塞都市「地球市」に住む一人の男の視点で物語は進んでいく。

その世界は地球の異常のために安息の地を求めていた。日々北上する時と重力の裂け目から逃れるために。運営組織の業務として初めて「地球市」の外へと出た男は歪に歪み、時とともにその度合いを増していく異常な世界の姿を認識していく。都市の人々の多くはそれを知らず、一部の人間だけが体験を経て都市が移動し続けなければならない理由を知る。

自身の体験から培った認識を、けれど終盤にて否定する記録が発見される。

 

秀逸なSF描写。信じていた認識を否定されていく、足元が崩れるような浮遊感。

明かされる事実と相反する現実、作中世界と現実世界の境目を見失いそうになる不安定な世界。フィリップ・K・ディックが好きな人などは特にお薦めです。

 

相半する認識に対してどのような答えを導くのか、それは読者によって異なるでしょう。

作品だけで完結せず、読者の認識を加えて初めて完成する作品だと思います。

これぞ読書の楽しみと強く主張したい作品です。400ページとやや重量感がありますがぜひ一度手に取ってみてください。

 

 

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1974年に英国SF協会賞に受賞した作品でもあります。