【徒然読書日記】 その9 革命前夜

 

革命前夜 (文春文庫)

革命前夜 (文春文庫)

 

 

念願の東ベルリンへの音楽留学を叶えたその日、眞山柊史は今日、昭和が終わったとの知らせを受けた。

 

1989年、東西に引き裂かれた激動のドイツにて音楽家を志す若者たち。灰色の空の下、監視と密告蔓延る街であっても、そこにはかつて多くの音楽を育んできた。

楽家たちの苦悩、ドイツにて醸成されてきた文化の美しさ、監視への閉塞感とそれに抗おうとする社会の不安定さ。人間と社会をまるで実際に見ているかのようなリアリティで描きだされている。

また最も驚かされるのはその音楽表現だ。音楽というものを言葉で表現するというのは非常に難しい。けれどこの須賀しのぶという作家はその難題をしっかりと表現しきっている。

「歴史系」、「社会系」、「音楽系」複数の要素を内包するこの作品はさまざまな人を楽しませてくれるだろう。

 

最後に作中の音楽描写を一部写真にて載せたいと思う。

 

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革命前夜

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革命前夜 271ページ

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