【徒然読書日記】 その42 みだら英泉

 

みだら英泉 (河出文庫)

みだら英泉 (河出文庫)

 

 

妖しき絵師の世界、妖しき江戸、妖しき情念。

 

江戸時代の浮世絵師 渓斎栄泉を中心として江戸の人々を描いた作品。

栄泉は実在した人物なのだが、北斎国芳ではなく春画絵師の栄泉をメインに持ってくるあたりが皆川さんらしく感じます。芸術を中心に据えた小説とはしばしば狂気を描いた作品が見られるが、本作も様々な登場人物達が狂気を抱えています。

堕落や死に駆られて絵を描く男、兄を支える自負から兄への執着を覚える妹、ふしだらな関係を受け入れ異常すら受け入れる妹、狂気に翻弄される幼い妹、商人として優れた絵師に執着する男。彼らはその狂気から生き方を歪め、時として死にすら陥ってしまう。

 

彼らがなぜそのような行動をしたのか、彼らの行きつく先はどこになるのか。それをぜひ見届けてほしい。

 

本作では葛飾北斎の娘、葛飾栄が彼らを見守る重要なポジションとして登場する。某スマホゲームで知名度も上がっているので、登場を見た時はなんだかワクワクしてしまいました。