【徒然読書日記】 その41 しにがみのバラッド

 

しにがみのバラッド。〈12〉 (電撃文庫)
 

 

それは人々の物語。そして優しい死神の物語。

死にゆく人、遺された人、悲しむ人。彼らの前に死神を名乗る真っ白な少女が現れる。

 

身近な人間の死や日常を生きることに苦しむ人々を描いた短編集。死神であるはずの少女は彼らの生が満たされたものとなることを願いながら、彼らを見守っている。

時に助言を与え、時に死者の想いを伝える。けれど結末は優しいものばかりではない。救われぬ者、悲劇となってしまう者も存在する。

しかしだからこそ、救われた者に対して安堵と喜びを覚えることができる。優しい物語へのほっとする感情と悲劇に対する痛みの濃淡が作品に深い味わいを与えてくれる。

 

12巻+番外編1巻の全13巻からなるが、個人的に6巻「きみがあるく塀のうえ。」

9巻「ニノ。」が一押しの作品です。

「きみがあるく塀のうえ。」は少子化が進み廃れていく街で、同年代が幼馴染の少女と二人だけとなった少年の話です。彼は少女と二人の生活がこれからも続いていけばいいと感じていたが、少女は未来を見ていた。お互いに相手のことを想っているが、今が続くことを望む少年と共に未来を生きたいと思った少女。そのすれ違いは広がり続け…。

「ニノ。」はVRゲームのテスターをする青年が主人公の話だ。当初はアルバイトとして始めた彼はやがてゲームにのめり込み、恋人や生活すらも顧みないようになっていく。そこに幸福を見出した青年は立ち止まることなく、進み続ける。そこに喜びを感じながら。

 

セガワ先生はライトノベル作家ですが、珍しいことに悲劇作の質が非常に高いと感じています。最近は日常系の作品が多いですが、また本作のような作品も描いてほしいですね。

 

 

 

また七草さんのイラストが成長しているのが感じられ、後半になるにつれどんどんすばらしくなっていきます。イラスト集などあればよかったのに…。

 

 

ドラマCD「しにがみのバラッド。」EP

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