【徒然読書日記】 その51 アルジャーノンに花束を
知的障害を抱える男が大学病院の臨床実験によって
天才的な知能を得るお話。
もっと頭が良くなりたい。
知能が高い方が幸せになれる。
現代社会を生きる上で多くの人が同意することでは
ないでしょうか。けれどそうではないとこの物語は
訴えている。
幼児程度の知能しかなかった男は頭が良くなりたいと
実験に参加して見事に高い知能を得たけれど、
それによって得たものは孤独だった。それまで自分を
馬鹿にしながらも最低限のところでは面倒を見てくれた
人々は心底嫌悪を示すようになり、尊敬した先生方は
より高い知能を得た後では虚飾の権威を振りかざして
いたことに気付き失望する。
そしてさらに・・・
一度得た知能、人格を再び失うことに恐怖する。
急激な変化は自身にも、周囲にも痛みをもたらすのだ。
自分にないものをねだるのではなく、自分が持つものを
尊重して身近にある幸福を享受することこそが幸せ
なのだということを、この物語は伝えてくる。