【徒然読書日記】 その16 恋する寄生虫
自分の感情が、行動が何かに支配されていたとしたらあなたはどうしますか?
その寄生虫に寄生されたものは異常な習性を得るとともに、宿主同士を恋に陥らせる。
潔癖症の男と視線恐怖症の女子高生が次第に心を通わせていく前半から、次々と明かされる事実の判明によって葛藤を描く後半へと移行していく。自身で選んだと思った行動が何者かによってもたらされたものであったときその過去は偽りなのか。価値のないものなのか。確かに相手を想っていても、その感情が偽りかもしれない。そんな感情と理性の板挟みに苛まれる姿は痛々しくも尊い。
寄生虫の知識なども説明しながら、丁寧な描写で感情を引き込む物語は同時に人の心や生き方といったものについても考えさせられる。
どのようなきっかけであったとしても、育まれた過程は確かに自身のものであるはずだ。
けれど割り切れない、別の選択を選んだ仮定に想いを馳せてしまうのも人のサガだろう。この本を読んであなたはどう思うであろうか。
コミカライズもされているので、手軽に読んでみたいという人にはそちらからもおススメ。