【徒然読書日記】 その17 冷たい方程式

冷たい方程式 (ハヤカワ文庫SF)

冷たい方程式 (ハヤカワ文庫SF)

 

異なる作家9名によるSF短編集。

アイザック・アシモフ「信念」やアルフレッド・べスター「オッディとイド」など大御所作家の作品もすばらしいが、やはり最も推したいのは表題作でもあるトム・ゴドウィンの「冷たい方程式」だ。

 

医薬品を届けるために運航中の宇宙船で密航者の少女が見つかる。けれどその船が目的地にたどり着くためには人1人の重さは妨げになってしまう。船の操作を行えるのは搭乗者の男1人。そして船の到着が遅れれば7名の命が失われる。導き出される答えは少女の命を諦めるしかない。

ここまで読んで「冷たい方程式」の意味を理解した時、震えるような衝撃を受けた。

思考実験としてトロッコ問題などがあるが、それに近しいものがある。多くの命を救うために少数の命を犠牲にすることの是非は解答を得ない永遠のテーマだ。

 

そういった思考実験的な面とは別に、この作品にはもう一つ面白いエピソードがある。

この作品が発表された後、読者達の手によって少女を救うための解法が送られたり、オマージュ作品が作成されたりしたのだ。暖かい方程式、暖かい解法など一度検索してみてほしい。

 

f:id:Tatarianaster:20190625234816j:plain

思考実験で関心があればトロッコ問題やカルネアデスの板マイケル・サンデルの白熱教室なども一度調べてみると面白いかと思います。