【徒然読書日記】 その15 隣の家の少女

 

隣の家の少女 (扶桑社ミステリー)

隣の家の少女 (扶桑社ミステリー)

 

 

この本を読むことは痛みを伴う。

 

人間のおぞましさ、子供の残酷さ、正義という言葉の空空しさをこれほどまでに思い知る作品を他に知らない。

田舎町で友人たちと楽しく暮らしていたデイヴィッドの環境にある変化があった。友人の家に両親を事故で失った姉妹が引き取られたのだ。歳の近いその姉妹も友人に加わり、日常は続くかに思われた。

けれど姉妹を引き取ったシングルマザーは理由の分からぬ狂気に陥っていく。姉妹を監禁し、虐待を加える。これまでは気さくなおばさんであったはずなのに。大人に対して逆らうことができない子供たちは虐待を共に行う側へと回り、行為の苛烈さは増していく。

 

これは実話を基にした物語だ。集団において疑問を感じても周囲に逆らえず、いじめを止めることができないというのはよく聞く事例だが、そういった生々しいリアリティが自分の身近でも起こりえると恐怖を引き立てる。読者は主人公に対して行動を起こしてくれと願うような気持ちでページをめくっていくのだが・・・。

現実社会において、行動を起こした際には、時すでに遅しとなっていることはままあることなのだ。

 

 

元教師かつ元俳優、ダラス・マイヤーの作家としての一面。ジャック・ケッチャムペンネーム。ホラー作家として高い評価を得ており、ホラー映画の巨匠スティーブン・キングから絶賛を受けた。2018年に癌で亡くなられています。