【徒然読書日記】 その40 うそつき、うそつき

 

うそつき、うそつき

うそつき、うそつき

 

 嘘のない世界は人に優しい世界になりえるだろうか。

 

意図的な嘘に反応してランプが光る首輪が全ての人間に取り付けられた社会。

国民管理を行うディストピア社会としての側面を持つ作品であるが、それ以上に「人間」を、特に「偽りを暴かれる人間関係」というものを鋭く描いた小説です。首輪によって嘘のない社会を作ろうとしても、そこに生きる人々は何とかして本心を隠したいと技術を磨く。

仕草で隠す、至近距離まで近づいて相手の視界に首輪が映らないようにする、強烈なショックを与えて首輪を見る余裕を奪う。その理由もまた様々だ。利益のためであり、思いやりであり、うしろめたさでもある。

 

それを否定することは人間そのものの否定であり、社会を形成することを放棄しなければならない。自分を慕う我が子や友人に対して、私はもうあなたを愛していないなどとどうして伝えられようか。人の心は移り替わり、その度に関係をリセットする価値観を現在の人間は獲得できていない。

 

これは人間の未熟さだろうか。それとも理想が間違っているのだろうか。

少なくともこれは何度も思案され、そうし続けていかなければならない問題なのだろう。

作者がこの作品を生み出したように。