【徒然読書日記】 その5 沈黙

 

沈黙 (新潮文庫)

沈黙 (新潮文庫)

 

 

 

 

最も怖ろしいのは「沈黙」だった。神が何もなさらないことだった。

 

ポルトガル司祭の視点で描かれる日本のキリシタン弾圧。

弾圧に苦しむ民衆と何もできない自身への無力感、そして揺らぐ信仰への葛藤。

抗う者の苦悩、屈してしまう者の苦悩、罰する者の苦悩。気づけば自身を重ねてしまい、大きな葛藤が胸に迫る。各登場人物の胸の内を想像することでこの作品をより味わうことができるだろう。

2017年発表の映画版もおススメ。Amazonプライムにて無料で視聴できます。

 

この本を読んでいて、なぜこれほどの弾圧が行われたのかということを疑問に思った。

作中ではこの疑問に答えはない。自身で調べてみると、キリスト教が有色人種への侵略兵器として用いられた歴史を知ることができた。キリスト教を否定するわけではないが、現代人にとっての赤軍のようなものだったのだろう。白人諸国の脅威を知った豊臣秀吉が始めたキリシタン追放は徳川幕府へと引き継がれていくこととなる

そういった学びの機会を得たという意味でも私にとっては大切な書である。

 

 

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小説版。原作

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映画版。2017年の作品