【徒然読書日記】 その1 クシエルの矢

 

クシエルの矢〈1〉八天使の王国 (ハヤカワ文庫FT)

クシエルの矢〈1〉八天使の王国 (ハヤカワ文庫FT)

 

 

その1 クシエルの矢

ライトノベルのようにも見える表紙だが中身は重厚なファンタジー小説

両親から身売りされ、娼館で育った女主人公フェードルは、貴族デローネイに買い取られ宮廷で諜報活動を生業とすることとなり、夜の技と機転を駆使して陰謀渦巻く貴族社会を奔走する。裏切りや近しい人の死に直面しながらも破滅を切り抜けるべく立ち回る姿は目が離せない。娼婦を主人公として諜報戦を描く作品というのは斬新で、ページをめくる手が止まらなかった。

 

中世ヨーロッパ的な社会構造だが国や文化は異なっている。中心となるのは他者への性的奉仕を神聖視する信仰が根付いていることだ。

本作から話は逸れるが、現代の性に関する価値観はキリスト教の影響を大きく受けている。キリスト教普及以前のギリシャ神話的価値観の時代には性に対して開放的な価値観が一般的であったという。もしキリスト教ユダヤ教などに代わる信仰が根付いていれば現実世界でも同様の社会が存在しえたのかもしれない。そんな視点でこの作品を見てみるとまた違った面白さを味わえるかと思う。

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3冊で1部を構成しており、全9冊が出ています。